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千葉地方裁判所 昭和41年(手ワ)16号 判決 1966年7月20日

原告 和田二朗

右訴訟代理人弁護士 中元勇

同 中村光彦

被告 織戸光男

右訴訟代理人弁護士 今川一雄

主文

被告は原告に対し、金三〇万円およびこれに対する昭和三九年八月五日から完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決および仮執行の宣言を求め、その請求原因として左のとおり陳述した。

一、被告は訴外株式会社新あしべに対し次の約束手形一通を振出した。

金額三〇万円、満期昭和三九年八月五日、支払地千葉市、支払場所東京相互銀行千葉支店、振出地船橋市、振出日昭和三九年五月一四日、受取人株式会社新あしべ。

二、原告は右新あしべから白地裏書により右手形の譲渡を受けてその所持人となった。

三、原告は同手形を訴外和歌山信用金庫に隠れたる取立委任裏書をなし、同金庫は満期にこれを支払場所に呈示して支払を求めたが拒絶されたので、原告は右信用金庫から同手形の返還を受けて自己の裏書後の裏書を抹消して現にこれを所持している。よってここに被告に対し、手形金三〇万円およびこれに対する満期の昭和三九年八月五日から完済に至るまで年六分の割合による利息の支払を求める。

右のように述べ、被告の抗弁事実を否認すると述べた。

被告およびその訴訟代理人は適法の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないが、右訴訟代理人は答弁書と題する書面を提出したので、これを陳述したものとみなす。そして右書面によれば、原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁および抗弁として左のとおり述べている。

一、請求原因第一項および第三項中被告が原告主張の手形の支払を拒絶したことはいずれもこれを認めるけれども、その余はすべて不知。

二、原告主張の手形は株式会社新あしべから原告に対し裏書譲渡された形式をとっているが、右裏書譲渡は無権限者によりなされた無効のものである。すなわち、同手形面において株式会社新あしべの代表者は高瀬清となっているが、同人は在任していた昭和三九年五月二八日まで右裏書譲渡の事実を全く与り知らない。右日時まで同手形は株式会社新あしべの手許にあり、右日時後に右手形は原告に対し裏書譲渡されたものである。したがって、裏書当時高瀬清は同会社の代表取締役を辞任して代表権を失っていたものであるから、右裏書は無権限者によりなされた無効のものであり、同手形の裏書は連続しないことが明らかで、被告に支払義務はない。

三、仮に右主張が認められないとしても、同手形は、株式会社新あしべと訴外織戸物産株式会社との間に昭和三九年四月下旬成立した株式会社新あしべ(旅館)の売買または経営参加の予約に対する前渡金として交付されたものであるところ、右契約は昭和三九年五月下旬解除され、したがって株式会社新あしべは同手形を被告に返還する義務があるものであるが、原告は右事情を知って同手形を取得したものであるから、被告にその支払義務はない。

右のように述べている。

立証として、原告訴訟代理人は、甲第一ないし第五号証を提出した。

理由

被告が株式会社新あしべに対し、原告主張の約束手形一通を振出したことは当事者間に争いがなく、右争いのない事実によりその手形面の表部分のみの成立を認めうる甲第一号証によると、右手形は株式会社新あしべから白地裏書により原告に裏書譲渡された形式になっており、裏書が連続しているので、同手形の占有者である原告はその適法な所持人と推定すべきである。しかるに、被告は、右裏書は同会社の代表権限のない者によりなされた無効のものであるから、同手形は裏書の連続を欠くというけれども、裏書の連続は外形的事実を問題にするものであるから、裏書が手形の記載上連続していればよく、実質的に有効な裏書が連続していることを要しないものであり、したがって、右手形は前記のように裏書の連続していることが明らかで、被告の主張は理由がない。

次に被告は、同手形の原因関係を理由とする人的抗弁の主張をするけれども、これを認めるに足る証拠はないので、右主張は採用することができない。

また、真正に成立したと認むべき甲第一号証中の表符箋によると、同手形が支払のため満期に支払場所に呈示され、拒絶され(右拒絶の点は当事者間に争いがない。)たことが明らかである。<以下省略>。

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